今回紹介させて頂く参考書は、
1986年に新声社から発行された『理系数学マル秘解答術55』です。
まずは著者の人物像に触れてみたいと思います。
紺野智生先生は私立開成高校を経て、慶應義塾大学理工学部に入学。
数学を研究する傍ら、進学塾で受験数学の指導にあたり、
卒業後も早稲田予備校で教鞭をとりました。
当ブログで紹介する参考書は、
先生達が長い年月をかけ成熟した学習方法をまとめたものが多いですが、
本書は学友であった井川治久氏(後に早稲田予備校英語担当)にアイデアをもらいながら、
井川氏が既に新声社から発行していた、
受験ブタさんシリーズの一つとして大学在学中に制作されました。
有名大学に在籍している大学生が書いた、
受験参考書のはしりとなった本と言われています。
それでは中を覗いてみましょう。
構成としては、
著者自身が受験の際にまとめあげたノートをベースに、
塾で教えている生徒達の声を拾い上げ、
読めばそのまま分かる実用的な参考書となるように以下の点で工夫されています。
①理系の入試によく出題される問題を55題に絞り、1つ1つの内容を濃くしている。
②「解答」は理解を助けるために途中の計算式を一切省略せず、苦手な人でも分かるように詳しいものにしている。
合わせて、入試本番での解答時には省いた方が良い部分は「*」をつけて区別している。
③「テクニック」として、受験を経験したからこそ書ける、受験生の初歩的な盲点を各所に設けている。
必要があれば1つの解答中に何度も挿入し、徹底的にフォローしている。
まえがきには、
まず気軽に頁を開いてほしい。電車でもいいし、ちょっと時間の空いた時でも。
机の上でなければ勉強はできないというわけではない。
とあり、新書サイズで持ち運びしやすく使い勝手の良い作りになっています。
また、本書を利用した効果的な勉強法として、
学習のグレード分けや選択を行い、
自分の実力に応じた方法をとることを推奨しています。
・グレードA
「テクニック」を参考にしながら1つの問題ごとにその「解答」を完璧に理解する。
その後テクニックを何回も読んで暗記するように努力する。
・グレードB
解答を読みながら、その問題の意図やプロセスを把握する作業を反復する。
・グレードC
試験本番同様の姿勢で問題を解く。解答を見ながら自身が間違えた箇所を吟味し、解答の書き方を完璧に理解する。
その後、解答・テクニックを完璧に暗記する。
・グレードD
ただ単に問題を読んだだけで、テクニック・プロセス・暗記事項の全内容が思い浮かぶか試してみる。
これができるようになれば解答術を習得したことになる。
例えば、
数学が苦手ならA→B→C
難関突破対策ならC→D
直前チェックならB→D
といったように実力や時期に応じて、勉強方法を切り替えることで、
効率的で効果的な学習が実現できるといった仕組みです。
何より本人が実践して成功したテクニックだということに説得力がありますね。
ベテランの指導者とはまた違った目線から作られた1冊。
機会があれば是非お試し頂きたいです。
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