リック出版 タイの尻尾よりゴキブリの頭 1985 初台総合研究所+酒井狂平

初台総合研究所いつもお越しくださっている皆様、いつもありがとうございます。
初めてお越しくださった皆様、はじめまして。
本日も、当社で発掘できた絶版参考書の中から選りすぐりの良著をご紹介させていただたいと思います。
最後までどうぞおつきあいくださいませ。
本日、紹介いたしますのは

「リック出版 タイの尻尾よりゴキブリの頭 」初台総合研究所+酒井狂平(著)でございます。
  • 単行本: 230ページ
  • 出版社: リック出版 (1985/04/15初版)
  • ISBN-10: 4-947617-00-4
  • 発売日: 1985/04

今から32年前に発行されています。「当時の現役大学生がかいた大学ガイド」とありますので、今ガイド誌としての役割は果たせるかどうか疑問ですが、当時の受験事情を知るうえでの文化的な資料としての価値が大きいと思います。

すごいインパクトのあるタイトルですが、

たいのおよりいわしのあたま【鯛の尾より鰯の頭】を捻ったと推察されます。

意味は、
大きい団体で低い地位に甘んじているよりも、小さい団体でもその長となる方がよい。(引用コトバンク:デジタル大辞林 第三版の解説より)
在京の大学生の3000人にアンケートを実施してまとめた内容とのこと。発行の1985年はバブル期の直前なので当時の大学生の考えが今の意識との違いを比較し、知ることができるのは面白そうですね。
では、早速目次から紹介いたしましょう。

かなり軽い感じの文章で、当時としても1970年台ごろの文体のようなので当時から既に古めかしい表現であったような印象は否めませんね。
導入最初の話題
キミにはキミの夢があり ぼくにはぼくの道がある
幸せ話は5分で足りる!ぼくの話…
なぜ一流?なぜ二流?
を続いて紹介いたします。

キミにはキミの夢があり ぼくにはぼくの道がある
早稲田政経学部 江川淳さんの話。
高校時代に二人の友人に人生を学んだ話が紹介されています。
一人は、天才。一人は秀才。秀才がノイローゼで休学。1位を取れない悩みが原因。
そこで天才に彼が言う。「秀才をダメにしたのは、天才。おまえだ。」と。
天才は言う。「ヤツはオレに負けたんじゃない。自分に負けたのさ。」と。
そして、先生が彼に言う。「天才のお母さんが来て、息子がこの3年間、夜中の3時まで毎日勉強しているから、受験期くらいのんびりさせてやりたい。」と言っていたと。
そして、お前のお母さんは「勉強しないから、勉強させて欲しい。」と言ってくる。
「話が逆だ。少しは見習え。」と。
彼は、天才の頭の良さは努力によるもので成り立っていて、勉強さえすればできるようになるという凡夫の言い訳セオリーが復権し笑い、諦めが消えたといっています。
そして、そこから学んだ教訓が2つ
「受験勉強は、大学入る手段に過ぎない。決して無理をするな!」
「他人と同じ土俵で競うな。自分の持ち味で勝負しろ。」
無理をして潰れては、たしかに元も子もないですね。
わかり易いエピソードです。

幸せ話は5分で足りる!ぼくの話…
この話、要約すると大学に入るために頑張って勉強して、目標の大学に合格してから在学中に次の目標を決めようとしていたら、大学に入ったら思ったよりも自由過ぎて困ってしまったと。そういうことなのです。
授業は、サボってもどうにかなってしまうので遊んでしまって、どこへ就職したら良いかわからなくなってしまい、日に日に不安が増すばかりと書かれていました。
大学へ入る事自体が目的になってしまって、いざ入学するとやりたいことが無い。
目標意識がないまま、過ごす学生が54.2%もいるというアンケート結果が合わせて紹介されています。

なぜ一流?なぜ二流?
ここでは拓殖大学へ進学した田部井さんお話。
東大を出て、一流商社へ就職した先輩に「どこの大学?」と聞かれ、「拓殖大学です。」と言ったら軽蔑の眼差しを浴びてしまった。そこで、実際には予定されていないカナダ分校へ留学をすると嘘をついたら、先輩の態度が変わり、軽蔑から尊敬へ一転することになった。自分自身で大学は二流校だと思っていたが、自分に特色(留学帰り)があれば世間は認めてくれるんだ。ということ。
その後、田部井さんは留学の決意を本当に固める。というエピソード。

ここまでで3つのエピソードで共通しているのは「どこへいくのか?」が最大の目的ではなく、「何をするのか?」が明確でないとせっかくのチャンスをムダに過ごしてしまってもったいないということだと感じました。
ここについては、現在の受験でも考えは同じ。
当方は、芸大卒ですが、学科の専門については大学デビューだったために、入学してからそこまで既に勉強していた人たちとの間に絶対に無理な超えられない壁があったと感じたものでした。
ですので、最初の2ヶ月ほどは大学生活がつまらなくなっていましたが、ある時に得意な部分を自分で発見することができ、そこからは毎日が発見の連続で逆に周りが経験者ばかりだったので最短で吸収・成長ができました。
3回生のころには、自分自身で制作の指揮を取れるようになっていました。
目的がはっきりすれば、チャンスと時間が豊富にあるのが大学です。
さて、最後に本題に戻りますが
そういった受験(進学)について軽妙にかかれてはいますが芯の部分はしっかりしたコンセプトの元で執筆されており、眼が覚めるような感覚になり、よい刺激を受けました。古い分、不変な部分が浮き彫りにされるのかしれませんね!
タイの尻尾よりゴキブリの頭
やはり時代を超えて評価されるものには不変の良さがあるものだと発見することができました。
それでは、また良著を発掘して皆様へ紹介させていただきたいと思います。
次回更新もお楽しみに!

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