今回紹介させて頂く参考書は、
1975年に旺文社から発行された『これで足りる日本史 連想式日本史75話』です。
表紙カバーはなんとも言えない独特の色使いとデザイン。
学習参考書の堅苦しさを感じさせず、ついつい手に取って中身を確認したくなりますね。
まずは著者の人物像に触れてみたいと思います。
乾宏巳先生は東京教育大学大学院修士課程日本史学科卒業後、
都立両国高校教諭として20年間近く大学受験の指導にあたりました。
日本史が苦手で覚えるより忘れる分量の方が多いと困っている生徒に対し、
「忘れることも、覚えることと同じように頭の働きの一つ。
よって、忘れてしまった知識をいかにして速やかに思い出すかが大切な問題。」とアドバイスされていたそうです。
後に大阪教育大学教授として、日本近世史の講義を担当。
専門は「都市史」で、
『記録・都市生活史 なにわ大坂菊屋町』や『近世都市住民の研究』といったような、
主に庶民の生活様式の移ろいにスポットライトを当てた本を数多く出版されています。
本書が暗記項目の羅列ではなく、興味深いエピソードを軸に構成されているのは、
生活史の研究を長年行ってきた先生の特色が色濃く出ているためだと思います。
それでは中を覗いてみましょう。
はしがきには歴史を苦手とするのは「歴史は単語の暗記もの」と頭から信じ込んでいる点が問題で、
歴史もまた理論的で科学的な教科であると述べています。
歴史の勉強法は、
この事実が歴史の流れにどのような役割を果たしたのか、
政治や社会の動きにどう絡んでいるのか、
前後の史実とはどう結び付くのか等々
時間をかけ何度も苦心を繰り返し、関連を理解していくことが重要です。
本書はもちろんこの正攻法型(忘れないための勉強法)にも利用することが出来ますが、
速戦型(忘れたことを思い出させる勉強法)として利用するために便利な配列になっていることが特徴的です。
忘れることは誰でもある。
その中で連想ゲームのヒントの如く、何かを手掛かりに出来るだけ素早く思い出せるように努めたいとし、
①エピソード:ページの始めに興味深く印象に残る概要を掲示。
②ポイント:エピソードのうちどの点を特に注意すべきか。
③歴史的背景:歴史の流れに位置付けて前後の情報を記載。
④ついでに:エピソードから更に連想の輪を広げられるように追記。
⑤おまけ:こぼれ話。無駄ではなくこれもまた1つのヒントになり得る。
といった分かりやすく整理整頓された情報が満載の構成になっていて、読み応え抜群です。
学生時代に先生が試験には出ないが~といった感じでこぼれ話程度に教えてくれた知識が、
案外一番記憶に残り続けているなんて経験、皆さんもあるのではないでしょうか?
一味違ったアプローチで日本史を学びたい方におすすめの1冊です。
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