今回紹介させて頂く参考書は、
1973年に旺文社から発行された『49年版 大学入試対策シリーズ12 傾向と対策 世界史B』です。
吉岡力先生は、1908年に山口県に生まれ、東京大学文学部西洋史学科を卒業。
旧制浦和高校や東京大学、東海大学で学生の指導にあたるかたわら、
私財を投じて歴史教育研究所を設立し、歴史教育の正しい発展のために尽力されました。
専攻は古代オリエント史ですが、中学・高校における歴史教育に熱意を示し、
多くの教科書や参考書に健筆をふるっています。
先生の著書は細かい事実を網羅的に拾っているだけでなく、
ちゃんとした史観を感じることが出来ると読者からの評価が大変高いようです。
それでは中を覗いてみましょう。
本書は同じ期間に毎年版を改めながら、
大学入試出題傾向の変遷に対応し、
実践的な実力を身に付けることができるようにとの念願のもとに作られたシリーズです。
学習効果を最大限に発揮できるよう、「傾向編」と「対策編」に分かれており、
まず「傾向編」では実際に学習を始める前に必要な情報を提示。
第1~4節に渡り、前年度までの入試の実情や注意点、
それをふまえて本年度の出題傾向を予想したコラムが載っています。
「入試盲点・弱点診断テスト」という50小問の客観テストが巻末に設けてあり、
これによって自分がどの分野のどの項目が弱点か把握することができます。
対策編にとりかかるまえに、テストを解いてみるのがオススメです。
この49年版を発行した当時の入試傾向は、
専門家でなければ分からないようなデータや、
微妙な解釈を求められる悪問が目につくことが多かったようで、
出題者の問題構成力を嘆いている一文があります。
しかしこれらは「人が犬を噛む問題」のようなもので、
それくらい珍しいから目立ってしまうだけである。
それよりも教科書や普段の授業を大事にし、歴史的理解を厚く積み上げていく正攻法が、
合格圏内への近道となるとアドバイスしています。
続く「対策編」では、
前年度の問題を中心としながら、過去の良問や、
入試傾向を知ってもらいたいという意図で採った問題も使われているので、
問題研究が徹底的にできるように構成されています。
各ページの例題で、
「研究」:正答を得るための考え方のヒント
「対策」:まとめ。押さえておくべき要点。
「Point」:誤りやすい事項の簡易チェック。
といった分類分けがされているのでスムーズに学習できます。
いかがだったでしょうか。
ごろあわせ世界史といったような本も効率の面では十分ですが、
こういった硬質な本を用いることで、より充実した世界史学習ができると思います。
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