本日は「デバグ 数学セミナ 数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・・・∞」の紹介です。
「デバグ」・・・?
どういう意味?かと不思議に思い、表紙をめくると・・・
今だと、ゲームが好きな方なら「デバッグ」と言えば通じますね。
時代を感じます。
この本が刊行されたのは、1969年(昭和44年)です。学生運動が盛んなころに発行されているため、その頃に青春時代を過ごした方や、興味のある方には数学書としての部分を除いても文章だけで楽しめると言われるくらいの内容になっています。
高校までの数学を登場人物の対話形式で解説されていますが、著者曰く
「高校数学のカリキュラムを無視して独走し、全然頼りにならないおしゃべり数学を目指した」そうです。
登場人物が、「大阪船場のいとはんのおせんちゃんと番頭の千蔵」や、「オキャン娘と家庭教師の大学生」など、結構キャラが立っていて楽しめます。
独特な台詞まわしで、かなり個性的です。
そこで、著者の小針晛宏さんは京都大学の助教授の在任中に39歳の若さで亡くなられた数学者。書評を見ると、かなり「変人」の文字がいい意味で踊っています。
かなりユーモアのある文章を書かれる方ですね。
後に「数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・・・∞ 高校からの数学入門」としてリファインされて1996年に再販されていますが、
再版の時代に合うように文章が修正されてしまっているため、このデバグの文章を読みたくて探している方も多いと聞きます。
1冊の数学書として、みた時には数学の理論を順を追って説明する訳でもなく、増してや問題集としての機能もないので、数学力がつくわけでもないのです。
しかし、この本が愛されて止まないのは「何となく数学が好きになり、世の中が少しだけ明るくなる本」であるからではないでしょうか?
再版版の上記の本は、現在は受験参考書ではなく理工学書のコーナーにあるようです。
いろんなヒントがちりばめられたこの本、一度手にとって見る価値のある一冊だと思います。
もう50年前の高校時代、本屋で何気なく手に取り、買ってしまいました。受験勉強の足しになるわけでもなさそうなのに買ったのは、扱ってる題材だったのだと思います。紙を30回折ることや、「いーの、あいじょう」だとか、受験数学にない、ちょっと違う世界がそこにあったからついつい買ってしまったのだと思います。この本の値打ちが分かったのは大学に入ってからでした。教育実習ではこの本をネタに脱線授業をしたり、その後、長らく本棚の奥の方にあったのですが、引っ越しを重ねるうちに姿が見えなくなってしまってました。子供に数学を教えたり、大学で非常勤講師をするようになったりで、あのかび臭い書籍が懐かしくなりましたが、後の祭りだった時に、復刻版に出会い、即買いましたが、???何かわからないけれど違和感が・・・
>再版の時代に合うように文章が修正されてしまっているため
そういうことだったんですね。
この先生の「確率・統計入門」(岩波書店)も長く読み継がれる良い本です。