本日は「東京西班牙語学会 西和熟語慣用句辞典」を紹介いたします。
当ブログでスペイン語関係の書籍を紹介するのは初めてですね。
本書の著者の村岡玄氏は東京外国語学校の出身で助手・教授を務め、
その職を辞したあとはスペイン語の普及に努めました。
昭和2年には「西和辞典」「独修西班牙語全解」(全3巻)を刊行、
これに続いて「西和熟語慣用句辞典」が執筆されました。
はしがき部分です。
「イスパニア語圏に在住する同胞諸君は、その国の宗教を理解し、その国
風に同化し、共々その国富源の開拓と、融利増進とに貢献せねばならぬ。
(略)所謂日本語式のイスパニア語ではなく、新大陸イスパニア語圏の人
々をして、自国人同様の感を抱かしめ、以て一層その信仰を蜜ならしめんとするのである。」
と述べられているとおり、「新大陸イスパニア語圏」であるメキシコへの移民へ向けて書かれています。
現地に馴染み、現地の人々と生活していくために、語学教育に必要な辞典は不可欠でした。
東京外国語大学の前身である東京外国語学校でスペイン語教育が始まったのは、1899年のことです。
当時のスペイン語教育が目指したのは、中南米への経済的進出や移住事業で活躍する実務者の養成でした。
それから30年後、時代が昭和にはいると、学習環境も整い、辞書や参考書も高等教育機関のみならず、広く一般に向けて刊行され始めていったのです。
辞典の内容です。
「撞球」とははビリヤードのことです。
その他には賭博、裁判など物騒ではありますが、
いざという時に実用的になりそうな文字がならんでいます。
メキシコへの移民は1897年、榎本武揚による35人の移民団からはじまりました。
この最初の試みは失敗に終わりましたが、この時の移民たちの多くが現地の女性と結婚して、メキシコの日本人移民の礎を築きました。
1910年代には安定した日系コミュニティが発達し、
現在では日系メキシコ人は1万7000名を数えるまでになっています。
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