今回紹介させて頂く参考書は、
1992年に三省堂から発行された『図で解ける入江のハイテク物理』です。
まずは著者の人物像に触れてみたいと思います。
入江捷廣先生は早稲田大学大学院で応用物理学を専攻し、博士課程を修了。
早稲田大学での10年余の講師生活を経て、河合塾・駿台予備校の教壇に立ちました。
「物理現象を考え始めると、疑問点は必ず同時に多発するでしょう。
物理現象に関与する知識は3次元的な広がりを持っているからです。
立体的なネットワーク作りには、じっくりと焦らずに理解できなくても考える努力が必要です。
勉強しているときだけでなく、食事をしているときも、
道路を歩いているときも、絶えず現象を探求してください。
やがてある日、突然なんのわだかまりもない感動の一瞬を迎えるはずです。」
物理攻略の知識は一朝一夕で身に付くものではないが、努力は必ず報われる。
疑問点や興味を持って取り組み、継続することはどの分野においても大切な考え方ですね。
また、専門は物理ですが数学の分野でも、
[リメディアル大学基礎数学]
[数学テクニカル辞典]
などを著し、理数系教育に活躍されています。
それでは中を覗いてみましょう。
本書の特徴として、以下の3点が挙げられます。
●「現象の途中経過を表示」
用語の定義や基礎的な事象の解説には、教科書は非常に優れた参考書であるとし、
その認識のもとに、より実践的な物理現象の理解を補助するための構成が練られています。
例えば、物体の運動・波の伝搬・回路のスイッチの開閉に伴う電荷の移動等、
物理では時間の経過につれ変化するものを対象とする場合がほとんどです。
本書ではただ結果を示すだけでなく、
スタート→途中経過→最終結果に対応する一連の図を時系列的に配列してあります。
動的なイメージ力で物理現象を観察することが、入試対策だけでなく、
物理そのものを理解する上で大切なことだという筆者の考えによるものです。
●「核心的な問題の抜粋」
物理における一つの真理は、別な表現をすればいろいろな形に見えるが、
結論は一つのまま変わることはないと言えます。
どの切り口から入っても同じ真理に到達するのであれば、
より核心的なテーマから入ったほうが、より確実にその真理に到達できるため、
本書ではその核心的な問題を過去の入試問題から選択し、
かつ枝葉の部分を切り捨てる形で手を加えてあります。
また、核心的な問題を用いて学習を進めるということは、
物理現象をコンパクトに整理分類し、物理を簡素な体系にしてとらえることが出来るので、
勉強の効率化に非常に役立ちます。
●「現象解析&解答の2重フォロー」
問題を見たとき、物理的感性を十分に生かしながら、
その問題の全体像をすばやくつかみとることが大切です。
全体像が頭の中にできてから解答に取り掛かったほうが見通しがよく、
問題を解く力が格段にレベルアップします。
本書では物理的感性を育てるために、
概要を掴んでもらう現象解析の部分と実際の解答の2つに区分されています。
まず現象解析を読み、それで解けるようであれば解けば良いし、
解けないのであれば解答を見て、経験を積んでいけば良いといった流れです。
いかがだったでしょうか。
ただ闇雲に問題数をこなすのではなく、本の特徴をつかみながら勉強を実行することで、
効率的かつ真の解答力が身に付くかと思います。
入江先生のハイテクな学習方法を是非一度お試しください。
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