『中央図書出版社 着眼と考え方 現代文解釈の方法 新訂版 遠藤嘉基/渡辺実 1979年発行』

こんにちは、本日も当社で発掘できた絶版書籍の中から選りすぐりの良書を紹介させていただきます。

今回、紹介させていただく1冊は、1979年発行の古い書籍となります。安易なテクニックに頼らない本物の読解の実力を養成することが出来る注目の一冊です。

『中央図書出版社 着眼と考え方 現代文解釈の方法 新訂版 遠藤嘉基/渡辺実 1979年発行』

こちらの書籍は、

名著「現代文解釈の基礎―着眼と考え方」の姉妹本で応用編です。受験生のみならず 現代文解釈の実力を自ら計り、解釈のどの方面が不得手であるかを自ら知り、バランスの取れた解釈力を自ら養おうとする人々のための参考書です。

 

本書の特色

本書は現代文の読み解き方の違いから三部から成り立っています。

・第一部  内容的意味の把握

・第二部  表現的意味の把握

・第三部  諸種の解釈力の総合

 

著者は遠藤嘉基先生と渡辺実先生で、お二人とも京都大学の教授です。
ここで両先生のプロフィールを紹介させていただきます。

遠藤嘉基先生(1905-1992)

京都帝国大学国文科をご卒業後、成城高等学校講師、大阪外国語学校講師を経て、京都大学文学部の教授、文学博士として国語史研究にご尽力されました。
『訓点資料と訓点語の研究』国文学会、『国語教育の諸問題』文教書院、『ことばと文学 古典随想』中央図書出版など、多数執筆されております。

渡辺実先生(1926-2019)

京都大学文学部をご卒業後、京都大学で文学博士、名誉教授、その後上智大学の教授、国語学会代表理事も務められご活躍されました。
『国語構文論』塙書房、『国語文法論』笠間書院、『日本語概説』岩波テキストブックスなど、多数執筆されております。

今回はそんな多数の著書の中から『中央出版社 着眼と考え方 現代文解釈の方法 新訂版』を紹介させていただきます。

それでは本書を目次から見ていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目次を見ると、第一部、第二部、第三部に分かれており、それぞれ第一部、第二部が5項目、第三部が3項目という構成になっています。
各部は第一部=「そのことばで表現されたことの、内容的意味をつかむ」、第二部=「その内容がそのことばで表現されたことの表現的意味をつかむ」、第三部=「両者の総合、完成」という役割を持っています。
この配列は解釈という作業の易しいものから難しいものへの順となっています。この順序どおりに最後まで読まれた時に最も高い効率を示すとご説明されています。
文章を読むということは、実はもっと深いものだということが、この目次からもわかってきます。また先生は前書きの部分で現代文は「考える力」という武器がないと読めないと力説されています。

すごく興味が沸いてきました。早速内容を見ていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一部は、文章の形を大きくとらえることに重点をおき、内容的意味を把握することを学びます。
まずはじめにこれから学ぼうとする詳しい手引きが添えられていますが、その中に「着眼点」が箇条書きでまとめられています。
例題文と解説部分との上下2段の枠組みになっていてとても見やいシンプルな構成となっています。
上段の例題分を読み進めると下段で解説を交えながら学べるので、何度も読むたびに理解した部分が試され、上達している実感が得られる気がします。

第二部も見てみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二部は第一部とは反対に、論理的内容を通して表現的意味をつかむことを主眼においています。
なので、方向性は細かなところから次第に広げ全体に及ぶような捉え方になります。
例題文と解説部分との上下2段の枠組み構成は第一部と同じなので、進め方が変化することはなく引き続きスムーズに読み進めていくことができます。
ここで気づいたことは、第一部で学んだことを時折振り返りながら進めていただけるようになっていることです。
立ち止まる人がいた場合でもそっと寄り添ってくれる、先生の温かい人柄が感じられるような気がいたします。

第三部は、第一部、第二部で取り扱った解釈力が、総合的に補完し合って身につけられることをテーマに、同様の構成で掘り下げていくようになっています。

ここで本書を利用された方のレビューがありましたので、ご紹介したいと思います。

飛躍のために
現代文の分野に記号化がある著者によりもたらされた。 現在を含め当初は目の当たり新しさを感じた方も多く、現に記号化により現代文の対策を終わろうとする人間が多くいるのも事実だろう。 が、このレビューを読んで頂いた方、少し考えてみてはいかがだろうか。現代文は記号化で解けるほど安易なものなのだろうか?現代文は評論を始め小説、現代詩も含むと言う。それが、記号による図式化で解けるのだろうか? 事実、記号化により解けなくはないが、やはり著者の言わんとする主題、根拠、心理が見えるのだろうか? 少し難しくはないか? 記号化に限界を感じている受験生も少なくないはずである。記号化は現代文を読解する上で晦渋な文章を明瞭にする点で、素直に読むことには勝るかもしれない。 けれども、私は読み解くことほど現代文において武器になるものはないと考えている。 著者の先生はもう既に亡くなられておられますが、悪い評判(京大の講義や著書)を聞いたことがありません。(私の知り得る範囲) 飛躍のために効率を捨てて私は良かったと心から思う。

 

渋い名著
現代文は独学が難しく優れた教師に習うのがいいのですが独学しなきゃいけない受験生にこの本がおすすめです。 読解法の本が多い中で、この本は設問解説に重点が置かれているからです。
難しいと思う受験生は基礎のほうからやったほうがいいです。ただし、理系は時間がないからどちらか1冊に留めるべきでしょう。

ここまでお読みいただきありがとうございました。最後に本書の特徴をおさらいさせていただきます。

・テクニックよりも、文章を読み解く力「考える力」=「解釈力」そのものを養うことを狙いとしている。
・現代文をどのように読み、どのように考えるか、つまり現代文を解釈する態度、考え方はどうあるべきか、という考え方に基づいている。
・第一部「そのことばで表現されたことの、内容的意味をつかむ」、第二部「その内容がそのことばで表現されたことの表現的意味をつかむ」、第三部「両者の総合、完成」という三部構成で解釈力を身につける。
・出題数は、「例題」13、「類題」24、「演習」33で計70題、
演習には参考問題と漢字学習とがそれぞれ脚注部分にあり、第一部と二部の終わりにそれぞれ確認テストがあり、全部合わせると138題になる。
例題には着眼点と要点、類題にはそれらを応用したポイントと考え方(問ごとの解法)がある。演習にはヒントがあり行き詰まった時の指針になる。

本書を読んで改めて思ったこと

私たちは普通、現代文を読むのに特殊な知識は一切使っていません。日常使っていることばで書かれた現代文は一部の例外はあるにせよ、たいていは知識なしで理解することが出来ます。
ただ、すらすら読んでわかったつもりでも、つっこんで考えてみると案外わかっていなかった、ということを経験することが多々あります。
出題数はかなりのボリュームになりますが、これを反復して練習することによって次第に解釈力が身についていくのではないかと思います。

近年、インターネットの普及などによりパソコンやスマートフォン、SNSなどコミュニケーションツールの発展には目を見張るものがありますが、果たして現代人の文章の解釈力は保たれているでしょうか。
本書は単に現代文の解釈だけに役立つにとどまらず、ひいては文章一般に対する解釈力の養成に役立つものになるのではないかと思います。

今回紹介させていただいた「現代文解釈の方法」は「現代文解釈の基礎」の姉妹本で応用編となりますが、基礎も本ブログでも紹介しておりますので、是非両方とも手に取っていただきたい書籍です。

これからも当社で発掘できた選りすぐりの良書を紹介していきたいと思います。

次回更新もどうぞお楽しみに!

 

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