駿台受験叢書 必修 小論文90日 名文に学ぶテクニック 藤田修一 1980

こんにちは!

今回ご紹介させていただく書籍は、「駿台叢書 必修小論文90日-名文に学ぶテクニック」になります。

著者は、藤田修一先生です。

ネットで検索してみますと、「私たちの日常は弾丸、何処かで誰かが血を流す」、「私たちの日常は濃い髭。そり落とすことで毎日が成り立つ」などの発言が残っているようです。

そして、発見と表現、イイタイコト、同値と対比、言い換え、論と例、など「記号読解」で現代文の読解法を確立した、とあります。

また、白手袋をして授業していたり、服装に気を使っており、たいへんお洒落で、女子に人気が高かった、らしい。

ちょっと興味が湧きます

現在は写真家として活動している。そうなので、さらに興味深々。。

そんな藤田修一先生の参考書はこちらでも紹介させていただきました。

駿台文庫 大学受験必修 現代文入門 記号でつかむイイタイコト 1982 藤田修一

それでは、本の中身について、ご案内させていただきます。

<はしがき>

1.何のためにか

この本は、文章を書く力を身につけさせるために書いたものである。書く力とは書くこと以外に養成できるはずがないと考えている人への啓蒙の意味もある

ヒットを打つための本をいくら読んでもヒットは打てるものではなく、コーチに就いて実地指導をしてもらった上での自己訓練が大きくものをいうのだろう…

なるほどこれは、よくわかります。上手な人のマネをしてみるとすぐに上達するのは、これ(自己訓練)に当たるのかもしれません。

NHKの「奇跡のレッスン」という番組を思い浮かべました。子どもの背中を少し押して上げると、彼ら彼女たちは、たった一週間でも、グンと力量が上がるドキュメンタリーです。世界から一流のコーチを招いて、指導してもらうものですが、ひょっとしたら、今回の書籍がそれに相当するような予感がしてきました。

読める人は書ける。書ける人は読めるのだ<優れた文章を書く秘訣は、優れた文章を読むことだ…

名文を読んで「ナニヲ」「イカニ書くべきか」を身に付けた上でペンを取るべきだ…

この本は、ここに照準を合わせていることが、他に例を見ない特徴だと書いてあります。

 

2.利用方法

この本の利用方法が箇条書きされています。

1)名文を暗誦するほどに何度も読もう

2)名文と対照しつつ悪文を検討する

3)悪文の課題に応じて毎日一つずつ作文をする

4)1と2と3を繰り返す

5)添削例について、添削個所の確認を行う

 

<目次>

目次を見ますと、最初に漱石がいて、次が江藤淳、三好達治、梅原猛、武者小路実篤とそうそうたる文壇の名士がならんでいるから、勉強する意欲が早くも湧いてくるように思います。

そう、興味や関心の的って意外にも目次にあったりするかもしれませんね。

 

<本文>

最初に紹介されているのは、漱石の鈴木三重吉宛書簡です。

焦点には、次のようにあります。

「ここでは、イイタイコトを一つにしぼって達意の文にすることを、漱石の書簡で学んでもらいたい」

どうして文章を書くのかと言えば、イイタイコトがあるから、それを伝えたいからということ。

せっかく書いて伝えようとしたにも関わらず、読んでもらうと、自分が思っているほどには感心してくれない、理解してもくれないということがよくあります。

その理由についても書いてあります。

あれも書きたい、これも書きたいとあとからどんどん欲が出て、多く書きすぎることが一番多い。シングルイシュー(単一論点)にすべきだと言う。

(そういえば、全般の国政選挙では、シングルイシューを掲げた政党が議席を増やしていたな、とここで思い出す。)

さらに冒頭で、イイタイコトををズバリ書いている!

「只一つ君に教訓したきことがある」がそれになります。

漱石が弟子の鈴木三重吉に言っておきたい教訓を書いた手紙だとわかります。

漱石と野坂昭如の文章がよく似ている感じがして、すいぶんと読み込んでいたときがあります。ふたりとも、とても読みやすくて、辞書不要だったと思います。

 

<悪文例>

<解説>

ナニに「腹がたった」ノカ読んでわからなくはないけれど、何と下手くそな作文だろう…と厳しい

近頃腹がたったことが課題なので、、腹がたった出来事を紹介すればそれで良いというほどの出来事が中心だ…とやはり厳しい。

こんなありふれた出来事を克明に紹介するのは、小学生並み…とまで言う。いやしくも小論文と名がつけば、出来事についてのキチンとした自分の意見が中心にならなければならない。この文章がイイタイコトが不明解な原因は、筆者のあれも書きたい、これも書きたいという意識が先行して主題の分裂をきたしたことだと言う。

論理的思考の不完全さからくる表現の非論理性なのだ。

そして最後に、たとえ主張見解は当然だとしても、目新しいものは何一つなくっても、これが読む人の心に食い入るように伝達されるなら良いが、事件の説明が不明瞭かつ、主張見解がうきあがっていないと解説されています。

では、どうするの?という疑問が湧いたら、本を読みすすめることになりそうです。

<展開こと生命>

2つ目の例は、江藤淳「夜の紅茶」が取り上げられています。

<焦点>

小論文で最も困難な課題は、文の展開!

第1段に対して、2段、3段をどう展開させていくかは、書く側も読む側も問題にするところになる。

動きや流れのない文章は魅力がなく、堂々めぐりは冗漫そのものだと言います。

この文章は、個人的な体験からスタートしていて、前の漱石の書簡も自分のことからスタートしていることが共通しているのですが、個人的な体験からスタートすることは、話が抽象的になるのを防ぎ、読者の好奇心をそそるため、文章表現上の効果があるという。

個人的な体験カラ普遍的な体験へ展開していて、序論、本論、結論という典型的な三段構成になっていることを紹介しています。

優れた文章は、

初めと終わりがキチンを照応している。

イイタイコト(漱石の書簡のように)がはっきりしている。

そしてキラリと光る一行がある。

本書籍は、すぐれた文章を書くには、15のポイントマスターせよ!と声を上げています。

15のポイントは、目次にありました。

1)ナニガイイタイノカ

2)展開こそ生命

3)書き出しできまる

4)結びの大切さ

5)達意の文

6)首尾照応

7)挙例の魅力

8)レトリックの妙

9)接続語は文章の羅針盤

10)漢語の効用

11)パンチの効き目

12)経験と想像

13)文は人の顔

14)キラリと光る一行

15)推敲の完璧さ

そう15もポイントがあるから、やはり何度も文章を書くという、自己訓練が必要なようです。

僕の参考書紹介も、首尾が照応したことにさせてもらって、ここで終了です。

それでは、次回もお楽しみくださいませ。

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