今回紹介させていただく参考書は、1958年初版発行、1977年最新版第1刷発行の「最新版 日本史の徹底整理」奈良本辰也著です。
奈良本先生は、船問屋に生まれ、旧制松山高校時代に軍事教練教官に反抗して退学を迫られた際に助けてくれた歴史の教師に感動、京都帝大史学科に進学。昭和13年兵庫県立農岡中学教諭、14年京都市史編纂に従事。戦時中「近代陶磁器業の成立」を刊行。20年立命館講師となり、22年教授に就任。とありました。
すいぶん、昔の歴史の先生ですが、現代の日本史の勉強にも、役立つところがたくさあると思って紹介されていただきます。
まずは、はしがきには、次のようにあります。
「ずいぶんとたくさんの歴史書が出版され、実に多くの人々に読まれている。人は、ふつう自ら求めて世界や日本の歴史について考え、理解を深めていくのである。だが、歴史とは何かというような問いかけには、なかなか即答は出来ない…」
哲学的ですね。でも勉強を重ねていくとは、たぶんそのようにしなければ、意義を見い出せないのかもしれません。
「そして今日では、歴史とは進歩するのか、あるいは進歩するがごとくみえて実は没落する過程をたどっているのではないか、そういう問いかけさえ出されてきている。」
歴史は繰り返すとか、核の危機から、人類が滅亡するなどのような記事が頭をよぎります。
そして、こうも書かれています。
「確かに、自然科学については、19世紀から20世紀にかけて驚くべき進歩をもたらした。人間の生活は豊かになり、欲望は満たされていった。人類の前途には、自由な創造と意義のある生産活動を実現する明るい未来が待ち受けていると思われた。だが、そのような楽天主義は許されなくなった…(中略)…人類を破滅させるに十分な恐るべき発明・発見がなされている」
1977年の時代背景といえば、米ソの冷戦下、緊張緩和(デタント)が進み初めていた頃ですが、ベルリンの壁崩壊までは、まだ10年以上も前になります。
「だからこそ、歴史の理解には、つねに現代的関心と問題意識が必要なのである。現在に生きる私たちが、私たちの祖先の営みの中から、何を取り出し、いかに整理して理解するか。このことを考えなくてはならない。そう結ばれています。」
現代的関心と問題意識が必要の文言に、そうか、そうなんだと相づちを打ちたい感じです。
さて、目次から見て行きましょう
目次は11章あります。
Ⅰ日本文化の黎明
Ⅱ国家成立と文化の伝来
Ⅲ古代国家と文化の形成
Ⅳ貴族政治と文化の展開
Ⅴ武家政治の確立と文化の動向
Ⅵ武家政治の展開と文化の普及
Ⅶ封建社会の確立と文化の興隆
Ⅷ封建社会の動揺と文化の成熟
Ⅸ近代国家の成立と文化の発達
Ⅹ近代の日本と世界
Ⅺ現代の日本と世界
こうやって、目次を見てみると、時代を彩る文化が時代と背中合わせにあるとよくわかります。
江戸時代とか、奈良時代とか「○○」時代は、しっかり覚えるけれど、○○文化もちゃんと勉強しなさいと言うことでしょう。
目次の最後を見ると、2つの世界=冷戦の最中にあることがわかります。
そして、本書の構成についてです。
「大略図」「展望」「整理」「本文」などに分けてそれぞれの切り口で、簡潔にまとめられた本になっています。
大略年表図は次のようにあります。
いずれも右側に文化の経脈が記されており、私達の生活関わるところが大事なことだと著者が発信されているように思います。
展望と整理
古代のところではぼんやりした感じで、つかみにくいところがありますが、現代の展望では、2019年の今に結びつくところがありますから、記載内容が理解しやすいと思いました。
「アメリカ一辺倒の日本外交は、遅まきながら沖縄の日本復帰を実現したけれども、アジア近隣諸国との関係は、改善の余地を多く残している。経済的発展が民主主義・国民生活の向上・発展に十分な役割を果たしているとはいえないし、資本主義国として国際政治・経済に占めている立場にも、反省すべき点は多い…」
この本が発刊されて、40年後の今はどうなのか?どっしり思いものを背負っているように思います。
本文
本文は、10項目以内の見出しで端的にまとめれていますから、見出しを読み飛ばして行くだけでも、理解が深まるように書かれています。
山川の教科書の横に置いて勉強してみたくなります。
古い参考書で有りながら今にも通じる記述も有り良書です。機会がございましたら是非お手にとってご覧下さい。
最後までお付き合いくださり誠にありがとうございました。
次回の参考書ブログも楽しみにしてくださいませ。
この記事へのコメントはありません。