本日紹介させていただくテキストはこちらになります。
駿台の伝説のテキスト、「CHOICE EXERCISES」(通称「CHOICE(チョイス)」)です。
このテキストの講義を受け持っておられたのが、奥井潔師 。
東洋大学文学部長などを務め、東京大学、法政大学、埼玉大学、東京女子大学、慶應義塾大学などの講師も歴任し東洋大学名誉教授にもなられた方です。
奥井師がどのような授業をされていたかというと・・・
作家の四方田犬彦さんによれば、「旧制高校の教授はかくや」という独特の雰囲気であったそうですが
内容はというと、こちらから引用させていただきました。
・授業は英文の文法上の要点を軽く説明したあと、最後に本文に関連した雑談を行う。
この雑談は、本文の理解の助けになるだけでなく人生論や道徳論にまでおよぶものであった。
・授業の本質は奥井潔師の深い見識から紡がれる豊かな内容の雑談であり、難解な英文の内容の理解だけでなく、受験生に人生について深く考えることを促すことにあり、受験レベルの些末な知識を増やすことは師の指導の目的ではなかったと思われる。
・和訳は単語一つ一つの意味を損なうことなく、正確で流暢なものであり、その難解な英文を日本語に翻訳するプロセスを追体験することは、大いに勉強になるものであり英語力のみならず現代文の記述力も同時に鍛えうるものであった。
奥井師の最後の著書となった「英文読解のナビゲーター」と同じく、難解な英文を様々な知識・教養を交えながら解きほぐしてゆく、受験を超えて人生に役立つ講義といえるでしょう。
なお、上記以外にも名言を数多く残しておられまして・・・
「いくら情報がたくさん増えてもね、人間はね、興味のあるものしか受け入れないのです。例えば僕の今日のこの話も情報の一つだ。君たちが興味持たなかったら明日はさわやかに忘れてるよ心配ない(笑)。そんな心配ないんです。君たちね、どんなにたくさんの人間の顔があったって 君、心配しなくていいんです。諸君はその顔の中で、ある自分の気に入った異性の顔しか覚えないからであります。あとはさわやかに忘れるよ。僕はそう思っている。だから情報の海に悶絶する、なんてのは嘘だと僕は思っている。僕等は自分の好きな知識を、その中から選び取るがよろしいのであります。」
こちらから引用させていただいたのですが、もはや英語とはほぼ関係ないですが、学校を卒業して社会に出てからも役立ちそうな人生論ですね。
「学は以て已むべからず」を体現されたかのような魂の雑談となっています。
ちなみに他の講師の方がCHOICEの講義を担当される場合、講義の進行が早かったりすると奥井師に怒られたそうで、このCHOICEの講義を最後まで終えられた講師の方はいないそうです。
その辺りのことは駿台でも教鞭を執り現在東進で講師をされている今井宏先生のブログでも書かれています。
今井先生によると、「CHOICEだけは滅多な講師には任せられない」という誇りが学校(駿台)側にも有り、講師にとっても「CHOICE」を担当することは憧れであったということです。
また、伊藤和夫師やその直系の高橋師・佐藤師・斉藤師など、いわゆる「駿台流構文主義」の先生方とは一線を画す、学者タイプ・教養優先の上品な先生方ばかりがCHOICEを担当されていたそうです。
この伝説のテキストともいえる「CHOICE(チョイス)」、現在は元駿台講師であり現在河合塾COSMOで教鞭を執る斎藤雅久氏により、その一部が復刊されています。
当時「CHOICE(チョイス)」の講義を受けた方からすると大変懐かしい本といえるのではないでしょうか。
奥井師は東大文学部英文科で中野好夫先生の指導を受けておりました。
その中野好夫先生が翻訳をされました「月と6ペンス」という小説が好きで、奥井師とともに取り上げさせていただきました。
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