本日ご紹介するのは「旺文社 大学入試対策シリーズ⑫ 日本史の傾向と対策 1967 田名網宏」です!
こちらは旺文社が昭和24年(1949年)に発刊し、2009年に「センター試験 傾向と対策」としてリニューアルするまでの60年間の「各大学の入試問題を分析し、各教科・科目の出題の“傾向”と“対策”を解説し、他に類のない独自の受験対策書」として人気を博しました。
公式によりますと「当時は同類の書籍がなく大変な売れ行きとなり、この本のシリーズ名である「傾向と対策」が、現在日常的に使われている「○○の“傾向と対策”」という、表現の起源になったという説もあります」とのこと!
過去の投稿でも少し紹介させて頂きましたが、本日はぐぐっとその魅力に迫ってみたいと思います!
目次を覗いてみますと・・・・・・
第1節 日本史入試の傾向はどう変わったか
A 問題の難易の程度はどうか
B 文化史の出題はどうか
C 近代史の出題はどうか
D 記述法の出題はどうか
E 史料問題はどうか
F 幅の広い多角的な問題が多くなってきた
第2節 統計からみた本年度日本史入試の出題傾向
A 出題形式からみた傾向
B 出題内容からみた傾向
第3節 43年度の日本史入試の予想とその効果的対策
A 43年度の日本史入試の予想
B 効果的な対策
C 理想的な年間計画
上記のように項目もかなり細かく、傾向を分析し対策を講じることに約30ページ以上も費やされていることが特徴的です。
難易度やそれぞれの単元の傾向、出題形式などいろいろな側面からの分析がされています。
さっそく詳細をみていきますと
すでに新課程の実施を機会に、理科・社会では、科目の指定制と選択性が行われるようになった。
しかし、完全な指定制を採用した大学は以外に少ない。ある今日科目を指定して、その中で選択性を採用する大学はかなりあるが、私立大学ではほとんどが従来どおりの選択性を採用している。
こうした指定制・選択性の決定は、前年の7月末までに決定公表されることになっているから、ラジオ法曹・全国学園新聞・螢雪時代(いずれも旺文社)などで、できるだけ早く、しかも確実にキャッチすることがたいせつである。
実際のや現場での状況を踏まえた上で出題の傾向などを予測し、また読者に情報を得られる時期などまで教示しています。
4単位から3単位に変わったことによって、教科書の学習時間が少なくなり、教科書の学習内容やページ数もそれだけ少なくなった。しかし、近世・近代はほとんど影響がなく、中世以前、ことに原始・古代が簡単になり、これにあまり学習時間をふりむけることはできなくなった。
このような事情が出題者側によく理解されていれば、旧課程の時にくらべて、すくなくとも原始・古代はもちろん、中世ぐらいまでの問題の程度は。かなり容易なものとなるはずである。
ところが、41年・42年度では、まだ旧課程も紙されているという特殊事情もあって、全体的にみると、かなりやさしくなり程度を下げたり、または多少はやさしくなった大学は比較的少なく、従来と全く変わらず、程度を下げていない大学の方が多い。
これでみると、大学の出題者は、高校の学習内容や程度がどう変わったかをすべて理解し、それに即応した出題をするとは限らないということがわかる。
具体的な大学名を並べることでより信憑性のある実用的な情報となっていますが、この情報を得るためにはもちろん実際の各大学の入試問題を研究したということです。
すごい労力ですね!
41年・42年度を通じて、最も注目すべき傾向は、記述方の問題と、つぎに述べる史料問題の増加の2点であるといってよい。
(中略)
43年度の受験生は、記述法の問題には特別な備えをしなくては絶対に不可であることを特に強調しておきたい。
抑えておくべきポイントを根拠をもって教えてくれています。
統計的データーなどをかなりの情報量をもって傾向を分析しており、説得力のある内容になっています。
情報と分析と対策が備わった、受験生にはかなり心強い参考書であることがわかります!
年度ごとの受験対策書としてはやはり赤本が有名ですが、ここまでのデーターと分析をしている参考書はなかなかないように思われ、旺文社のリサーチ力、受験に対する強みがかなり強力に活かされてます。
当時の史料としても大変興味深いシリーズですが、時代によって受験の様相は違えど、傾向と対策を講じる上で本シリーズの方法論は現代でも有効な受験対策に思いました!
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