駿台文庫 大学受験必修 現代文入門 記号でつかむイイタイコト 1982 藤田修一

本日も、当社で発掘できた絶版書籍の中から選りすぐりの良著を紹介させていただきます。

今回、紹介させていただく1冊は、1982年発行のとなります比較的古い書籍ではありますが、独自の記号を持ちいて現代文を説明しているという異色の一冊です。

『大学受験必修 現代文入門 記号でつかむイイタイコト』藤田修一

 

  • 単行本:149ページ
  • 出版社:駿台文庫
  • ISDN-13:978-4796114011
  • 発売日:1982/04

この書籍は

多様にみえる現代文を<記号の論理><ことばの論理>で読み解き、体系的な読解力を養成する現代文読解の基礎入門書となります。

今回の書籍の著者であります藤田修一先生は 『大学受験必修 現代文入門 記号でつかむイイタイコト』の中で、「A⇔B」「A=A’」などの4種類の記号を用いて記号読解という独自の方法論を編み出されております。

 

しかしながら、当時は記号で読解するという方法は、受験生に受け入れられず、あまりにも評判が悪かったという記述がありました。

「記号で現代文を解ける訳がない。」

この書籍が出た当初は、かなりインパクトのある書籍であり!
AやBやイイタイコトだの・・・あたかも記号を駆使すれば、まるで機械的に現代文が解けるというような方法には賛否両論がありました。

当然だと思います。このような用法は初めてのことですから。

しかしながら、この方法は理系の方に意外と受け入れられ、かなり効果的なことが実戦されていきました。出版当時としては画期的な手法で、駿台の現代文といえば「記号読解だ!」と言われた時代もありました。

 

ご存知の方も多いかもしれませんが、本書の著者の藤田修一先生は駿台予備校で教壇に立たれ、現代文の神様として名を馳せた方でもありますが、現代は写真家として活躍されており、『原宿狂詩曲』という写真集まで出されています。

教壇に立たれたいたときは、人生を、愛を、青春を、生き方を、優しく、熱く、静かに、時には情念をこめて生徒に語りかけ、引退した今でも教え子の方々から慕われておられます。

受験勉強だけでなく、日常から生徒さんに接しられておられたようで、こんな先生に教えてもらったら、また一味ちがうんだとうなと思ってしまいました。

 

本書でもそんな藤本修一先生の教えが伝わってきます。

 

現代文は、ホボ、ワカッタだけでは少しも面白くない。シッカリ、ワカッてくると、とても面白い。そのシッカリ、ワカル方法をつかむ訓練をする教習所がこの本だと考えて頂きたい。現代文をドノヨウニシテ読ミトルカについて書いたが、要点は次の通りである。

1“ナゼ”文章は書かれているのだろうか ―― イイタイコトがあるからである。
2“イイタイコト”をとらえるためには ―― 「記号の論理」と「ことばの論理」を
身につけて。
3“論理的に”文章をとらえるためには ―― “A⇔B”、“A=A’”、“}”、“Aカラ→Bヘ”の
四つの記号を武器とする。

 

 

イイタイコトの追求

問題文を数回読み、筆者のイイタイコトをほぼ掴んで、なぜ文章が書かれているのかという文章記述の本質からスタート。

ちょっと難しい表現ですが・・・

現在主流となっている「接続詞・助詞・指示語」などを頼りに文脈を追うというようなスタイルは藤田修一先生が築き上げられたスタイルとなります。

 

本書では例文を取り上げて

この例文の読解、つまり例文の著者のイイタイコトをつかまえるための方法論を
藤田修一先生独自の記号によって解説しています。
藤田先生以外にも、いろいろな記号、矢印、かっこなどを使って読解する方法論がありますが、藤田先生は、4つの記号で筆者のイイタイコトを掴んでいます。

段落ごとの各文章の関係を4つの記号で捉えることで段落ごとのイイタイコトを捉えていきます。

さらに、段落間の関係を分析し筆者のイイタイコトを捉えるという、きわめて数学的な論理に近い形で分析を進めている方法となります。

そのあたりが理系の方に受け入れられた要因でもあると思います。

当時、受験勉強で利用された方の書き込みでこんなことが書かれておりました。

記号読解法以前には現代文にはほとんど方法論らしい方法論がなく、ただしっかり文を読んで設問に答える、ということくらいであった。講師の解説も正解とその理由を言うだけで、初見の文章をどう読んでどうアプローチしていくかについてこの記号読解法以外には教えてくれるものがなかったのである。
受験国語の歴史的変遷から考えるとまさに大きなターニングポイントとなった一冊であり、多くの大人が影響を受けた。

この記号読解が受験界を支配した時代がある。著者は駿台国語科の元主任であり、私も実際に教えを受けたことがある。この記号を用いる読解の方法はよく切れる刀ではあるが、使い方を間違えて記号のみに拘泥してしまうと、とたんに偏差値が下がってしまう両刃の剣でもある。したがって向き不向きはあるが、国語の点数の伸び悩んでいる人は一度手にとってみるとよい。

当方も受験勉強をしていたころは、先生から問題の解法を聞くぐらいで、こういった方法はございませんでした。国語に限らず英語もそうですが、現代はこういった読解方法で勉強できることが少しうらやましいですね。

 

 

本書ではわずか27の例文ですが、この27文をじっくりと落ち着いて解説通りに記号を用いて反復して解いていけば、きっと現代文の解き方・読み方は変わってくると思います。

また、藤田修一先生が教壇に立たれたいた時の『セメント樽の中の手紙』を素材にした講義は今でも語られるほど有名な講義ではありました。

「へべれけに酔っ払いてえなぁ」 と情感を込めて読み上げ、

「『てえなぁ』ということは、酔っ払っていないということだね」。

この『セメント樽の中の手紙』は駿台の現代文テキストや『鑑賞昭和文学』などで、未だに取り上げられたおります。

藤田修一先生がこのプロレタリア文学を通して伝えたかった人生に横たわる理不尽や、どうしようもないやりきれなさの存在を本書でも感じ取っていただければと思います。

 

 

藤田修一先生の書籍は本書以外にも『必修漢字1200選』『現代文要説』『現代文演習 基礎編・中級編・上級編』など、現代文に関する著書がありますが、私が気になったのは、現在写真家として活動されている藤田先生の写真集が気になってしまいました。冒頭でも紹介させていただいた『原宿狂詩曲』はどういった書物なのか。おそらく教え子の方々も気になるところだと思います。

 

ということで、ネットで探してみたのですが・・・画像は見つけることができたのですが、販売されているところはどこもありませんでした。

若者の奇抜なファッションとメイクが目を引く表表紙となりタイトルから察すると『現在の若者の自由奔放な姿を描いた作品』のように思えるのですが、この作品についてご存知の方がおりましたら、ご一報と感想をいただければと思います。

 

今回は藤田先生の『現代文入門 記号でつかむイイタイコト』を紹介させていただきましたが、これからも当社で発掘できた選りすぐりの良著を紹介していきたいと思います。

次回更新もどうぞお楽しみに!

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