今回紹介させて頂く参考書は、
1988年に旺文社から発行された『鉄則 基礎解析』です。
「基礎解析」は1980年代に学習指導要領において設定されていた数学科目の1つで、
現行課程における「数学Ⅱ」におおよそ相当します。
この鉄則シリーズは1970~1990年代に学習指導要領が変わるたびに改訂を重ねました。
まずは著者の人物像に触れてみたいと思います。
寺田文行先生は東北帝国大学理学部数学科卒業後、
28歳で博士号を取得し、早稲田大学理工学部数学科の教授に就任。
その傍ら「大学受験ラジオ講座」の講師も務めました。
通称「ラ講」は旺文社創業者の赤尾好夫氏が、
教育の地域格差の解消を目指して企画したもので、
昨今のリモート教育が広がる中、復活を求める声が寄せられているそうです。
また、現在も用いられている高校数学教育の基本理念である、
「コアオプション方式」を提唱したのも寺田先生です。
教科書の内容を全て取り扱う基準的なコア教科(数I・II・III)と、
専門性が高い選択制のオプション教科(数A・B・C)を分ける考え方で、
限られたカリキュラム数の中で適切な教育が行えるように道を示しました。
それでは中を覗いてみましょう。
本書の主旨は自力で入試問題が解けるように、
数学をどう攻略するかを徹底コーチするというものです。
鉄則という形で体系的にまとめた今シリーズは、
基本項目の学習に便利で、かつ難問にも応用が利くと、
当時既に数学の参考書として確立していたチャート式と並び、
受験生の数学対策のバイブルとなりました。
利用法として大きく2STEPに分かれています。
■1stSTEP わからなくなった数学をわかる数学へ
①「重要事項」をなぜそうなるか意識しながら読む。
②「例題」を解く。ただし計算練習のためにあるのではなく、
解答への道筋を学ぶために利用する。
③「学びとろう」の解説を通して、どこに注意するかを覚える。
■2ndSTEP わかる数学から解ける数学へ
1stで身に着けた学力をより確かなものにするための実践編になります。
「鉄則ゼミ」の設問に挑戦し、どうしても解けないときは、
解説を真似てみることも推奨しています。
問題へのアタックの仕方さえ正しければ、必ず答えに至る糸口が見つかる。
数学の解法へ向けた正しいアプローチ方法を学び、
核となるものを身につければ自力でスラスラ解けるようになるという、
数学学習の醍醐味を味わいたい方に非常に有用な1冊であると思います。
寺田先生は今回ご紹介した鉄則シリーズのほか、
サイエンス社より大学数学の基礎固め、演習数学シリーズ本を多数出版されています。
解答解説が非常に丁寧で親切な設計になっていますので、こちらもオススメです。
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