正林書院 親切な物理Ⅰ 基礎編 渡辺久夫著書 1978年発行

本日も、当社で発掘できた絶版書籍の中から選りすぐりの良著を紹介させていただきます。

今回、紹介させていただく1冊は、1978年発行の古い参考書となり、物理の基礎に要点を置き初めて物理を学ぶ学生に向けた注目の1冊です。
高校で習う物理教科書の内容を完全に理解できるよう盛り込まれた参考書でもあります。


『正林書院 親切な物理Ⅰ 基礎編 渡辺久夫著書 1978年発行』

こちらの参考書は
書籍についている帯を見てもわかるように、「物理が面白くなった」という意見が非常に多いようなんです。
そもそも、「物理は難しくてわかりにくい」という受験生が多いのですが、本書では「わかる」ということと、「身につく」が重要視され
物理が「わかる」「身につく」ために構成されております。

著者は、京都教育大学で教壇に立たれ、物理学の教育法の研究と実践に取り組まれた「渡辺久夫」先生となります。
先に、渡辺久夫先生のプロフィールについて触れさせていただきます。



渡辺久夫先生(1908 – 1993)は
旧制東京高師を卒業
旧制彦根中学、京都二中、京都教育大学を歴任
物理学を研究されている研究者の一人ですが、渡辺先生はその中でも物理の教育方法について研究され
身をもって生徒の啓発指導当たられた数少ない研究者です。
「日進月歩の物理学の基礎を、どうして、正しく、効率よく、確実に、学生に理解させるか」を渡辺先生は実活動の成果を
この参考書にも盛り込み、読者にわかりやすいように説明されております。

渡辺先生の趣味は、物理の実験器具制作という、部類の物理研究者です。


今回ご紹介する書籍は、渡辺先生の「親切な物理シリーズ」の中から『親切は物理Ⅰ 基礎編』を紹介させていただきます。

それでは、本書を目次から見ていきたいと思います。

目次Ⅰ

目次Ⅰ

目次Ⅱ

目次Ⅱ

目次を見させていただきますと、計13章の構成となり、42項目からなっております。
参考書としては、ページ数が多いんです。本書を使用された方の感想にこんなことが書かれていました。

「ページ数が多いわりにドンドン進む。項目が多いが、説明が親切・丁寧、図が多く解りやすいので、理解が早い。」
「高校の教科書は項数の制限のため説明が簡単であり、先生方の説明も時間数不足のため十分でない。例題が豊富で具体例があるため、欠点を補える。」

と、絶賛されております。2個めの感想は恐らく先生からの感想だと思われます。
そんな絶賛されている本書をさらに見ていきたいと思います。

数学の公式

数学の公式

まず冒頭に記載されていたのが、数学の公式の数々です。
物理の参考書でありながら、数学の公式が先に記載されているのは、何か違和感がりますが、それだけ数学の公式が重要だということだと思います。

物理が苦手な人は実は数学の知識不足が原因で、この2つの関係の重要性を把握していないことが理由になっていることが多いようなんです。
数学は物理に限らず、化学や生物などあらゆる科学で必要であり、数学によって成り立っていることとなります。
現代物理学でも解析や微分は必須となりますので、物理が苦手というより、数学が苦手だから把握できないのかもしれません。

第Ⅰ編 力学

第Ⅰ編 力学

章のはじめには指針が書かれており、何を身につけるべきなのか要点を指摘しております。
各項目では、重点を解りやすくするため、各項目[A]、[B]などの記号をつけて重要部分を掲載し
そこを説明する説明文は小さめの文字で、説明文を読んでから主文を読み返すと、内容がさらに把握できます。

見出し文字で要点が伝わるように配慮されている。

見出し文字
[理由]・・・法則などが導かれる過程を精しく説明。法則の物理的意味を解説
[例]・・・・法則などの内容を具体化し、物理的像を描きやすくしている。
[註]・・・・細かい事柄を説明し、理解を助け考え違いを防ぐ。

例題1

例題1

簡単な法則や原理を載せただけで、一足飛びに難しい問題を解かせようとする参考書が多い。こうなると自力で問題が解けないから、解答を見てしまう。
この参考書では、原則と問題の中間にあたる説明や例題を豊富に用意し、[ガイド]を設けて問題を解くときの重要な点を記載し、自力で解けるように構成されております。

例題2

例題2

解答も親切丁寧に記載されております。
通常の参考書だと、解答が単に数値だけだったり、簡単すぎる解説だったりと、内容を理解できている人にとってはそれでも十分なのですが、解らない人にとっては勉強が進まず嫌なものです。
こちらの参考書では、解答の中にもメリハリをつけ、下線や太字により重要点を明らかにしております。
そして、図形なのかイラストなのか、挿絵の説明も解りやすいです。

勉強の計画が立てやすいようにも工夫されております。
先に項目を[A]、[B][C]などのように構成になっておるのは、自分の能力と志望大学の程度にあった勉強をするときに効果が上がるように、

[A]・・・余力のある人
[B]・・・中ぐらいの学生
[C]・・・余力のない人

など、現役高校生の勉強スタイル、浪人生の勉強スタイルをも考慮されております。
受験生に優しい参考書ですね。

今回も、本書を利用された熱心な方のコメントがありましたので、少し紹介させていただきます。

解らないから時間がかかる。問題が解けないから時間がかかる。そうなると嫌になるから進まない。
その反対によくわかればどんどん進み、問題も早く解ける。面白いからもっと進みたくなる。
項目が多いのですが、解りやすいのでドンドン進めるのが今までの物理の参考書ではないので、ありがたいです。

本書の特徴をまとめさせていただきますと

・ 入試に出そうもない難しい事柄や問題は可能な限りさけ、高校の教科書の内容を完全に理解できるようにされている。
・ 問題の解答だけでも60ページ近くを費やし詳しく解き、解答の中にも重要ヶ所・注意点を明示。
・ 当時の共通一次試験に対応し、これ一冊で網羅できるようになっている。

物理が身に付くということは、その事柄に関する法則や式が直ちに頭に浮かび、物理的な像が描け、問題を解く道筋がすぐに思い出せるということである。物理は系統的な学問で、前段の基礎の上に次ぎの事柄が積み重ねられる。
この参考書では、基礎の事柄の理解を重視するとともに、それを次の段階に応用し何回も繰り返して学習することにより身につくように構成されております。

今回は渡辺久夫先生の『親切な物理Ⅰ 基礎編』を紹介させていただきました。
紹介させて頂いたのはわずかな項目と例題のみですが、他の項目にも先生のこだわりの解答解説が掲載されておりますので、是非お手に取っていただきたい書籍です。

これからも当社で発掘できた選りすぐりの良著を紹介していきたいと思います。

次回更新もどうぞお楽しみに!

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