本日も、当社で発掘できた絶版書籍の中から選りすぐりの良著を紹介させていただきます。
今回、紹介させていただく1冊は、1991年発行の比較的古い書籍となり、テクニックに頼らないで本格的に国語力身につけるための注目の一冊です。
『中央図書出版社 着眼と考え方 現代文解釈の基礎 新訂版
遠藤嘉基/渡辺実著 1991発行』
こちらの書籍では、
「考える力」を養うために京都大学の教授でもある著者が現代文での授業の経験と反省を元に、本書には古文を取りいれての解釈力を深めていただいたいと思いを込めた稀有な一冊であります。
以前に下記の様な書籍を紹介させていただきましたが、こちらでは記号読解という特徴的なテクニックを使用されておりました。
同じ現代文でも考え方・解釈が全く違いますので、どちらの書籍も良本ではありますが、受験に使われる際はどちらかに絞って、自分に合う書籍を利用するのがいいかと思います。
本書ではこう言ったテクニックを使わないで本格的に現代文の国語力を身につけて頂くために、遠藤嘉基先生と渡辺実先生が文学的な観点と論理的な論点から現代文解釈を説明されております。
本書の著者でもある両先生とも京都大学の教授であり、試験問題の制作側の立場でありながら、受験生に何を求めているかを明確にしめされているとろこも参考になるかと思われます。
それでは、本書を見ていきたいと思います。
目次からもわかるように、「文学的な文章」「論理的な文章」とに分かれております。
「文学的な文章」では有名な著書を例題にし、
・主人公の人物像
・主人公をめぐる人間関係
・登場人物の心理
・意図・文体の解釈
・作者の考え方
「論理的な文章」ではこちらも代表的な著書を取り上げて、
・段落・全体の要旨
・具体的例題と抽象的見解
・論者の基本的な考え方
などを例題で取り上げ、考え方や着眼点について文学的な観点・論理的な観点から解説されております。
そもそも本書は、どのような方にご利用いただきたい書籍なのかを先にお伝えしたいと思います。
遠藤嘉基先生によりますと、本書は現代文解釈の基礎的な学力を養うためのガイドブック的な役割とされておりますため、高校に進学された方に焦点をあて、これからの現代文の勉強に役立てていただきたいとされております。
現代文は現在の入試では必須ですが、試験問題を作る立場である遠藤先生は、こんなことも書かれておりました。
現代文を受験の勉強のためだけに勉強する方が多いですが、現代文を読む力はあくまで教養のために必要であり、教養として大切だからこを入試にも重要な科目となっている。
ただ単に、入試で解けて大学に合格するだけでは、全く意味がないとされているんです。遠藤先生の受験生への先を見据えておもいやりの勉強法を本書で見て頂ければと思います。
では、本文を拝見させていただきます。
こちらでは、教科書にも掲載されている「芥川龍之介先生の羅生門」を取り上げての学習となります。
「羅生門」は誰もが一度は読んだことのある小説だと思いますが、当方もこれを読んだころの思いを考えながら見させていただきました。
そして、その頃「羅生門」て、まだあるのかなと思って調べたこともありました。
ちなみに、「羅生門」はすでにないんですよね。
京都が平安京だった頃に、現代の千本通に幅約80mにも及ぶ朱雀大路の南端に平安京の正門として存在したのが「羅生門」でした。
しかしながら、816年の台風で崩壊し再建されましたが、980年の暴風で再度崩壊しましたが、その後は再建されませんでした。
つまり、芥川龍之介先生が「羅生門」を発表した当時は、すでに羅生門は存在しない時代背景でした。
少し、話がずれてしまいましたが、そういう時代背景も考慮して作品を読み、学習するとまた感じ方が違うんですよね。
遠藤先生による「主人公の人物像」や「登場人物の心理」を見させていただくと、全くテクニックというのは感じられませんが、鋭い解説(考え方)は読みごたえが十分あります。
本文をその本質から理解してこそ、正しく内容を理解できるのだと改めて思ってしまいました。主張している点において、この参考書は、燦然たる輝きを放っています。
「演繹」や「帰納」といった推論の仕方を述べている部分、そして主張を「命題」として捉えている部分、主張とは何か、どのように主張を捉えたら良いかについて詳しく説明してくれているのは他の参考書ではなかなかないと思われます。
「論理的な文章」には、現代文解釈の方法や着眼点が体系的に示されて、例題を通して何を身につけるかが明示されているので、それを踏まえた上で演習できます。
最後になりますが、今回も、本書を利用された熱心な方のコメントがありましたので、少し紹介させていただきます。
受験生にあまり知られていないが、中味は非常に優れている。
だから、この本で勉強すれば、ライバルに大差をつけることができる。
「一発逆転 マル秘 裏ワザ勉強法 2012年版」(エール出版社)でも、この参考書を推薦している。
受験勉強を始める前に読む本。一流大学志望者は高1、中堅大学志望者は高2で。
この参考書は、本文の解説が超〜詳しいのが特長。本文よりも解説文の方が長いくらいだ。
問題を解くことよりも、本文を深く理解するための本。本文が理解できなければ、設問を解くことはできない。
例題だけをジックリと読み、練習問題は省略してよい。
これ 懐かしいですね。中学生のころ浜学園行ってて最高レベル特訓クラスでこの本使ってました。灘中でも使われてるそうで。さすが灘中、使う教科書のレベルが違うなぁって感じですよね。これ大学受験用なのに。問題も、使用されてる作品も優れたものばかりです。定番としては芥川龍之介の羅生門、森鴎外の最後の一句、亀井勝一郎や小林秀雄、田中美知太郎など一流の評論家の問題もあります。ミロのヴィーナスの腕の文章もあったっけ。とにかく日本近代文学の名作がたくさんあります。コラムも読んでて面白かったなぁ。現代文のさらなる高みを目指したい方に是非オススメです。
本書を見させていただいて、解釈・考え方にこだわった書籍ではありますが、例題に使用されている作品の数々が教科書でも定番のものばかりで選別されておられるので、誰もが取り組みやすい良本だと思います。
今回は遠藤嘉基先生/渡辺実先生の『着眼と考え方 現代文解釈の基礎 新訂版』を紹介させていただきました。紹介させて頂いたのはわずか1例のみの内容で大変申し訳ない限りですが、他の例題にも先生方のこだわりの考え方が掲載されておりますので、是非お手に取っていただきたい書籍です。
これからも当社で発掘できた選りすぐりの良著を紹介していきたいと思います。
次回更新もどうぞお楽しみに!
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