本日は西崎一郎編「官立大学入学試験英語問題選集」を紹介いたします。
本書には大正8年から昭和22年までの官立大学英語入試問題が掲載されています。
現在の大学に当たるのが旧制高等学校や大学予科になりますので、それよりも上の高等教育機関への入試問題集です。
東京帝国大学は昭和22年から東京大学に改称されましたので、「東京大学」初の入試問題も掲載されています。
そしてこの2年後である昭和24年には旧制第一高等学校、旧制東京高等学校高等科を併合し、新制の東京大学となります。
編者の西崎一郎氏は富山県魚津市出身のアメリカ文学者です。
昭和2年に東京帝国大学英文科を卒業したあと、故郷の富山県の高等学校で教鞭をとっておられました。
その後は学習院高等科へうつり、戦後はそのまま学習院大学の教授となり、お茶の水女子大学、白百合女子大学の教授を勤められました。
著書には本書を始めとする英語の入試対策本や、モビイ・ディック「白鯨」、トルーマン・カポーテ「草の竪琴」などの英文学の翻訳があります。
英文和訳問題と和文英訳問題をそれぞれ少しずつ見てみましょう。
農学部、理学部の和訳問題です。
英語が苦手な本日の担当者にはどの程度のレベルなのか検討付きかねますが、私にはかろうじて単語は拾えるものの、全く読解しかねるレベルです。
こちらは法学部の英訳問題です。
昭和16年の問題は太平洋戦争直前ということもあり、中国の治外法権についての内容になっています。
まず、日本語の内容を理解するところからも難解な問題です。
法学部らしく、当時の国際的な時事問題を絡めた英訳問題となっています。
実際には旧制大学の受験には無資格の学科もあり、現在の大学受験に当たる旧制高校受験が難関でした。
以前紹介させていただいた欧文社「昭和十五年度旺文社通信添削会員合格者一覧合格通知転載」に、当時の一高合格者の感謝状が掲載されいますが、
当時の最難関試験を突破した学生たちの興奮がうかがえます。
東京帝国大学の入試でも、法学部の英訳問題はかなり難しいように思いますが、学科によっては簡単な問題もあるようです。
英語力に自信のある方は旧制東京帝国大学の入試問題にチャレンジしてみてはいかがでしょう。
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