今回紹介する書籍は、木村良夫先生著の「真紀子と裕介の目で見る線形代数(サイエンティスト社)」です。
真紀子さんらしき人物が、裕介君らしき男の子になにやら、銃を向けています。
そんなちょっと驚きの表紙から始まります。
一体何が起こっているのでしょうか。さっそく内容を見ていきましょう。
ちょっと懐かしいタッチのマンガからのスタート!!
\真紀子と裕介の線形変換ガン/の幕開けです。
「線形代数」がわからなくて困っている真紀子さんを助けるべく
裕介君が取り出したのが、なんとピストル?!?!
裕介君:これは線形変換ガンというのサ。この銃で撃つと何でも線形変換で変形しちゃうのサ。
というわけで、真紀子さんと裕介君は街に繰り出して
様々なものをガンで撃って「線形代数」とはどういうものなのかを勉強しにいくわけです。
本編の内容に入る前に、あまり聞きなじみのないかもしれない「線形代数」について簡単にご説明します。
「線形代数」とは・・・
線形空間と線形変換を中心とした理論を研究する代数学の一分野で、
工学や化学、物理学、統計学、経済学、情報系など様々な場面で応用されています。
情報系では、例えばCGをはじめとする画像処理プログラミングに利用されていたり、
経済学の分野では、「限られた資源の中で最大の利益を生み出すには、どのようにすればよいのか」といった計算に線形代数が使われています。
「線形代数」は意外にも身近なところで多く利用されているようですが、
抽象的なためか、学生の中でも苦手としている人が多いようですね。
冒頭をマンガから始めたのも、少しでも読者に「線形代数がおもしろい」と感じてもらいたいという
木村先生の思いがあるようです。
マンガを見て、意外と面白そう、と思った方は、一緒に先を読み進めていきましょう。
この書籍は、タイトルの通り、“目で見る事”に重点が置かれており、
頭の中でただ数式を巡らせるのではなく、視覚的に線形変換を理解し、楽しく勉強できるような内容になっています。
ぱらぱらっとめくっただけでも、かなりのイラストの量が確認できます。
本編は、村木先生と真紀子さん、そして裕介君の対話の形で展開されており、
読者もきっとつまづくであろう箇所で、同じように真紀子さんや裕介君もつまずくのです。
そこで“質問”と“先生の解説”を繰り返しながら、ひとつずつクリアにしていきます。
猫や車があらゆる方向に伸ばされたり、縮められたりしているイラストを見ていると、
数学の本を読んでいる事を忘れてしまいそうな瞬間があります。
まさに木村先生の“想定通り”ではないでしょうか。
続いては行列式の勉強に移っていきます。
小学生の頃、係を決める時なんかに使ったあの“あみだ”です。
私も小さい頃、様々な線を引いて複雑な“あみだくじ”を作った記憶があります。
またまた勉強とはかけ離れているようにも思えますが、
“あみだ”の中には、実に様々な法則があり、数学の対象として非常に面白いとの理由で、
著者の木村先生の授業でも多く使用され、学生の反応も非常に良かったそうです。
抽象的でぼんやりとしたイメージしかできなかったものが、
親しみのあるイラストや図を多用して解説することによって、
読者がよりイメージを具体化しやすいように工夫されています。
なんだか今までよりもぐっと気楽に数学と向き合えるようになった気がしませんか?
参考書を読む、というよりも物語を読み進めならが、「線形代数」を学び、
真紀子さんと裕介君、そして読者の皆さんがともに成長していく、、、そんな1冊と言えます。
もっと「線形代数」に触れてみたいっ!!!と思った方には、同じく木村良夫先生著の
『対話・おもしろ線形代数』
をおすすめします。
こちらの本は、『大学一年生のためのおもしろ線形代数』の改訂新版です。
線形代数という学問が、どう現実世界と関わっているのか、どのような応用を持っているのかをできるだけ多くの問題を通して示した1冊です。
ユニークな問題が豊富に盛り込まれており、線形代数の面白さを実感できると思います。
初学者にもおすすめの本です。
ちなみに、少し余談とはなりますが、冒頭で裕介君が<線形変換ガン>を出すシーン…
このシーンで、あの有名なマンガを思い浮かべた人も多いはず!!
そうっ!ドラえもんです!!
まさに著者の木村先生も、ドラえもんがポケットから道具を取り出すシーンを見て、
『もしドラえもんがポケットから<線形変換ガン>を出したらどうだろうか』と思い付き、実際に作者藤子不二夫さんに手紙を書いたそうです。
が…..残念ながら、子ども向けのドラえもんのストーリーにしては難しすぎるとの理由で断られてしまったのだとか….
ドラえもんとの共演の夢は叶いませんでしたが、苦手科目の克服の夢が叶う1冊です。
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