本日も、当社で発掘できた絶版書籍の中から選りすぐりの良著を紹介させていただきます。
今回、紹介させていただく1冊は、2002年発行の比較的新しい書籍となり、書籍内では多彩な発想と解法が紹介されている注目の一冊です。
『文理 多彩な発想 あざやかな解法 ヒラメキの数学 千田守著 2002年発行』
こちらの書籍では、
高校の数学で、どうしたら興味深く数学を楽しんでもらえるかを研究されている千田守先生が、その成果を盛り込んだ意欲的な一冊です。
本書の特徴として
Ⅰ. 入試で完答にたどり着く最善手の解答を探る。
Ⅱ. 何通りもの解法で各種領域の内容を総復習できる。
Ⅲ. 多彩な発想が身に付き解法に戸惑いがなくなる。
という受験向けの参考書と思われますが、千田先生のその先を見据えた説く過程や発想を味わっていただきたい書籍です。
本書内に『千田守』先生の写真がございましたので、先に千田先生について少しだけ紹介させていただきます。
優しそうなお顔の千田先生ですが、大学院時代は酒井栄一教授のもとで多変数複素関数論という関数論を研究されておりました。
「あざやかな数学」「実用的な数学」をめざし、ラスベガスやモナコのカジノで実践的な確率論を研究されたという経験の持ち主でもあります。
(カジノで研究成果を実践されたということですが、結果が気になりますよね。)
さらに、2015年には桐蔭学園の選抜メンバーと数学甲子園に出場されて、初出場で4位に入られるという功績も持っておられます。
経歴を調べてみて感じたのは、千田先生の数学を学んでみたいと思いませんか?
経験に基づいたすごく面白い解説が伺えそうですよね。
先の説明で「先を見据えた」と表現しましたが、数学の答えは1つですが、千田先生の仰るには、そこにたどり着く方法は幾通りもあります。
その多様性・自由性を学ぶことにより頭脳の柔軟性や新鮮な発想力を身につけていただきたいと表記されております。
当方には、社会人やその先の人生の壁にぶち当たった時こそ、視点を変えた解法の工夫・発想力が生きてくるのだと千田先生は言っておられるのだと感じました。
まえがきでは、こんなことも書かれていました。
「数学を学習する本来の目的は入試問題を解けるようになることではありません。
論理的思考力を中心とし、脳を鍛えること」
確かにそうかもしれませんが、入試で解けないと合格できないのが現実だと思ってしまいました。
でも、この参考書で勉強し、合格した生徒さんがゆくゆくは先生の理念に共感し、先生の願い未来に向かって歩んでくれれば素晴らしいと思います。
それでは、本書を見ていきたいと思います。
目次を拝見させていただいたところ、全19章からなるⅠAⅡBⅢC全般からの構成となっております。さらに、各章内にもサブ項目があり、第1章から進める必要はなく、自分の学習したい項目から進めることが出来ます。
では、本文の第1章を少し拝見させていただきます。
各章とも例題があり、解法がいくつかある考えやすい問題が選択されておるようです。まずはやはり、例題は解法を見ずに自分で問題を解くのが良いかと思われます。
そして、答えが間違っている、間違ってないで終わらせないでください。ここからがこの本書の見せ所ですから。
例題の解答として何通りかの解法が紹介されており、その中から自分の考えに近い解法は必ずあるはずです。
その解法を復習することにより、さらに考えが深くなっていくと思います。
さらに、数学的視野を広めるためも別の解法を学習しましょう。
「こんな方法もあるのか」と発見に繋がれば、さらに勉強になると思います。
写真では解法を1例のみ載せさせて頂きましたが、他の解法は本書を手に取ってお確かめいただければと思います。この書籍では
【例題】【解法】【解説】【補題】【Tea Time】という順で構成されております。
簡単に各項目を紹介させていただきます。
(少しばかし、当方の感想も入れさせていただいておます)
【例題】・・・各章に適した問題が選択されている
【解法】・・・何通りかの解法を紹介。自分が理解しやすい解法に重点を置いて学習するのが良いです。
【解説】・・・考え方に重点を置いた説明なため、若干途中の計算過程は省略されている。
【補題】・・・同じ考え方で解くことができる問題を掲載。理解力UPに繋がります。
【Tea time】・・・題の通りの休憩時間。面白いので以下で少し紹介します。
Tea timeと言いながらも、意外とためになる?ので紹介いたします。
こちらのTea timeでは
・ある生徒が無謀にも東大プレ模試を受けた。
・東大プレというと相当難しいはず。
・1問に集中して正解を出して、偏差値50以上。
・しかもその解法が地道に全てを試して答えを出した。
千田先生は、「こういった解法もあるよ。」と言いたいのでしょうか。
「ん~。」このような解法はありだと思いますか。ダメだと思いますか。
私は、複雑な気持ちと先生の仰るのが理解できます。ただ、自分の力でできることを絞り出して対策を取ったその生徒さんの努力は素晴らしいなあと感じました。そのまま結果まで出てしまったのも驚きです。
では、もう一問と言いたいところですが、こちらもTea timeです。
こちらのTea timeでは
・3000円の商品を買うために、3人で1000円づつ出した。
・4人目が現れて、2500円で買って来るといい、500円のおつりが発生。
・3人には100円づつ返金し、4人目は手数料として200円貰った。
・改めて金額を計算すると、2900円になった。(900円×3人+手数料200円=2900円)
これを読んだときに、当方も「ん。計算が合わない」と最初思ってしまいましたが、
「なぜ200円を足してるんだ。」と。
解答が記載されてないので、ここまでとさせていただきます。
最後になりますが、今回も、本書を利用された熱心な方のコメントがありましたので、少し紹介させていただきます。
一つの問題に対し、さまざまなアプローチが提示されている。じっくり読むと、問題解法に役に立つ「宝石」があちらこちらに転がっているのがわかってくる。繰り返し目を通す価値のある良書。
ただし、高3の秋以降、解法速度を上げていく時期に始めるのには向いていないと思う。
一つの問題に対していくつものやり方が掲載されている斬新な参考書です。
問題演習のページがあればもっとよかったです。
コラムには気楽に読めるものもあれば、より深い数学の世界を垣間見られるものもあり、読み応えがありました。
本書を見させていただいて、解法にこだわった書籍ではありますが、例題にもこだわって選別されたおられる良本だと思います。
本書内で千田先生はこんなことも書かれておりました。
生徒から「微分やベクトルなんかを学んで、社会にでてからどう役にたつのですか?」とよく言われることがある。
その時の先生の答えは、「だったら、体育の鉄棒やマット運動は社会に出て役に立つか?スポーツで体を鍛え、学問で頭脳を鍛えて人は成長する」と言われておりました。
また、最近の進学校では「私立文系コース」を作り、数学を学ばせないカリキュラムは教育上、脳の発育にも良くないと書かれております。
確かにそうだとは思います。受験に必要のない科目は学ばなくていいのか?という問題は難しい限りです。
今回は千田守先生の『あざやかな解法 ヒラメキの数学』を紹介させていただきました。紹介させて頂いたのはわずか1例のみ内容ですが、他の例題にも多数の解法が掲載されておりますので、是非お手に取っていただきたい書籍です。
これからも当社で発掘できた選りすぐりの良著を紹介していきたいと思います。
次回更新もどうぞお楽しみに!
この記事へのコメントはありません。