今回ご紹介する書籍は、
1960年に金星堂から発行された『対訳現代英文選』です。
本書は「東京大学昭和八英会」の会員が、英米の現代作家の作品から選りすぐった英文100題を集め、
構文や語句の注釈を付した対訳書です。
東京大学昭和八英会とは、東大英文科を昭和8年に卒業し当時全国の大学や高校で教鞭をとっていた30人からなる会です。
本書の寄稿者には東京外国語大学教授(当時)で後に駿台予備学校でも英語を教え、多数の英語教科書を著した梶木隆一先生や、
東京大学教授(当時)で英語学者の上野景福先生などがいます。
一般的な英語教材と大きく違う点は、本書は1人の作者によるものではなく、
30人の現役教授が各々の視点で撰文し翻訳、注釈しているので、多種多様な英文や読解に触れることができることです。
それでは中を覗いてみましょう。
構成としては、
まず英語の原文があり、
その下に【構文】と題して、文法を中心とした文を読み解くためのヒントが書かれています。
難解な文を重点的にレクチャーしてくれています。
次ページには原文の和訳、
その下に【語句】と題して、語句の説明が載っています。
単に単語の和訳だけでなく、その文章中でどのような意味かを的確に書かれています。
設問があるわけでもなく、淡々と対訳・注釈が続く非常にシンプルな構成なので、
本書をどのように英語学習に活かすかは手に取った読者次第になるかもしれません。
まえがきによると、英語習熟度によってABCの3つのクラスに分けて学ぶことを提案しています。
・Aクラス
英文だけを読んで和訳する。
英語に自信のある人はまず一通り訳してみて、
後から構文・語句を含めて対訳と照らし合わせると学びが深まりそうです。
・Bクラス
構文の説明までを読んで和訳する。
難易度の高い複雑な文は構文で説明してくれていることが多いので、
詰まったら構文に目を移しながら進めると効率が良い勉強ができます。
・Cクラス
語句の説明までを読んで和訳する
文章を読解するには単語レベルの知識が足りていない場合は、
語句で補いながら訳していけば、単純に暗記するより単語も入ってきやすいのではないでしょうか。
このようにレベルに合わせた使い方ができ、
1周目はCクラスで、2周目はBクラスで、3周目はAクラスでというように何度も読み込めば、
段階を踏んで習熟度が上がり、知識も定着しやすい構成になっています。
また、収録されている英文には、オー・ヘンリーやディケンズなどの有名作家の小説から、
生物学者ダーウィンやフランスの女優サラ・ベルナールの著述まで、本当に多岐にわたっています。
英語の学習だけでなく、英米の名文の原典にあたって素養を深める手助けにもなるかもしれません。
機会があれば是非お試し頂きたいです。
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