本日ご紹介する書籍は
「新・古文要説 Ⅱ日記文学篇」です。
著者は駿台予備校で人気を誇る桑原岩雄先生です。
今回どの参考書を紹介しようかなと考えていたところ、こちらの参考書が目に留まり
桑原先生のことを調べていくうちに「こんな先生がいたらなぁ!」と惹かれるほど魅力的な人物です!
それでは、まずはそんな桑原先生のことを紹介させていただきます。
こちらは桑原岩雄先生がご自身で描いた自画像です。
父、桑原岩雄トップページより。
うっ…上手い…!!
桑原先生は絵を描くことも趣味としており、「絵描きの心を持った教師」とひそかに自負していたとのことです。
上記リンクの「父、桑原岩雄トップページ」ではご子息が先生のコーナーを用意されています。
教え子の生の声が多数寄せられてより、どれだけ愛されていたか伝わってきます。
実際どのくらい人気だったのかというと、東大の新入生に行った「尊敬する人物」アンケートで見事1位をとり、
奥井潔先生も「その中でも随一に心高潔で、清らかな名教師だったのが国語の桑原先生。この方は絵もおかきになる。弓も非常に高い境地に達しておられる。お書きになった論文も高雅なものでしてね。一本の竹のように、清々しい風懐の素晴らしい先生でしたね」と褒められ、
関谷浩先生は非常に尊敬しており、現在でも授業中に「僕が駿台に骨を埋めようと決意したのは桑原先生がいたからです。」といった旨を述べているほどだそうです。
上記サイトの教え子の方々の話も読んでいて心動かされましたが、筆者が個人的に一押しの逸話は『源氏物語』を非常に愛好しており、テキストで源氏が扱われた際、本文を朗読して「よいですなぁ」と言って授業をせずに帰ったという内容ですね 🙂
桑原先生について語り始めると長くなりそうなのでここは割愛をして本題の参考書を見ていきましょう!
宮本武蔵は、その著「五輪の書」の中で、真剣勝負の態度を説いて、「観見二つの目を使い」といっている。「観の目」というのは相手を凝視する目であり、「見の目」というのは周囲全体を見る目である。「観の目強く、見の目弱く」ともいっている。「考える」とは、全体を見ることから出発することである。これに時間を惜しまないことである。(『第一、原文を読みながら自力で解釈を考えること』より抜粋)
この言葉は桑原先生が、文章を細かい部分に気を配りつつ広い視野を持つという2つの視点で読むことを大事にしていたことだそうです。
この考え方を英語に応用したのが今井宏先生の『パラグラフリーディング読本』とのこと。
第一段階の理解の範囲をどこまで広げることができるかによって、着眼点ということの意味がよくわかってくるであろう。(『第二、着眼点の一つ一つを助けとして、改めて解釈を推し進めること』より抜粋)
わかるというのは理解の通りに覚えるということではない。語釈も文法も通解も、すべて原文を理解するための材料で、原文の理解が即ち古文の実力である。(『第三、語釈・文法を読んで原文と読み較べること、また、通解を読んで原文と読み較べること』より抜粋)
新しい所へ進む前には、必ず既習二、三回分の原文を復習し、理解を確かめるとともに、勘を整えてかかかることである。できるだけ低い音読を用いるがいい。耳から入れることによって、古文の微妙な調子が呑み込こめて、鑑賞力も進み、直観力も磨かれるものである。(『第五、二回目以後は復習をしてから新しい所に進むこと』より抜粋)
こうして学習を終わった問題文も、時々、五分でも七分でも僅かな時間を利用して味読することである。それはもう復習などという固苦しいものでなく楽しみといえるものになるであろう。(『第六、既習の問題文をたびたび味読すること』より抜粋)
はしがきの段階ですでに古文の実力をどう伸ばせばいいかが記されていますね。はしがきを読むだけでもタメになります。
本編には紫式部日記や蜻蛉日記といった古文の授業でも聞くような有名作品を取り扱っています。
原文、その下に通解、左側に着眼点と語釈・文法の解説がされています。
この配列、書き方…どこかで見たような…
あ、コーネル式ノートですね!
コーネル式ノートとはノートの1ページをそれぞれ3つの領域に分け、情報を整理しながらノートを取っていくということ。この3つに分けるという作業によって情報の整理が簡単になり、ノートの中身が驚くほど分かりやすいものになるのです。
つまりこの参考書は見る側に何が重要で、どう要約すればいいのか、とても配慮されているのですね。
古文を愛し、生徒たちのために楽しく分かりやすい授業をしていた先生らしい書籍でした。
こちらは受験勉強にはもちろん、もっと知識を深めたい方や古文を楽しみたい方にもオススメな参考書です!
どこかでこの書籍と出会ったら是非一度手に取って中身をご覧になってみてください。
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